インターネットの登場は、情報へのアクセスや処理の方法に大きな変化をもたらしました。作業に費やす時間の節約などではなく、コミュニケーションや、学習、コラボレーションの方法に革命を起こしたのです。当時直面した課題や学習曲線の険しさにもかかわらず、インターネットは受け入れられ、つながりのある世界について期待したとおりの価値を与えてくれました。
Microsoft Copilotとしても知られるCopilot for Microsoft 365のようなツールに代表される生成AIによって、現在、新たな技術革命の入り口に立っています。これは、生成AIの機能をコア ワークプレイスや追加のエンタープライズ プラットフォームに直接統合していくものです。その価値を単純に時間の節約量で測りたくなりますが、この見方には限界があります。
アバナードが独自に行ったAI Copilotの使用に関する初期調査と、世界中の3,000人以上を対象としたAI導入準備の新たなグローバル調査の結果によると、これらのツールにはさらに多くのメリットがあることが示されています。経営陣やその従業員を含む大多数(79%)は、今後1年間で生成AIツールが週の労働時間の半分に影響を与えると予測していますが、AICopilotが日常業務に与える最大のインパクトとして、アイデアの創造性やイノベーショの促進を期待しています。
インターネットと同様に、生成AIの真の価値は効率性ではありません。仕事へのアプローチを根本的に変化させるポテンシャルを秘めています。創造力を増幅させ、タスク完了のさらに向こうへと視野を広げることができるようになります。
生産性の指標を超えて:時計を止める
生産性の指標、特に時間の節約という観点によるアウトプット評価の指標は、長年、新たなテクノロジーを値踏みするための基準となっていました。これは筋が通っているように思えます。より短時間でアウトプットの量を引き上げるのならば、それは変革的であることに違いはありません。しかし、この視点は狭すぎます。特にテクノロジーを導入するということに関して考えるならば、量的なメリットだけに留まりません。AI Copilotは、仕事の質を高めてイノベーションを促進し、新たなソリューションを開拓するための舞台を整える可能性を秘めています。
産業組織心理学から引用すると、テクノロジーの導入と生産性の関係は複雑で多次元的です。「企業の効率性、生産性、パフォーマンスを向上させるためのテクノロジー導入戦略 ¹ 」という論文では、デジタル トランスフォーメーションの成功は、単なる新しいツールの導入にとどまらないことを強調しています。トップダウンの賛同、明確なロード マップ、創造性とコラボレーションを重視する文化が必要不可欠です。しかし、それ以上に、時間の節約だけに焦点を当てしまうと、生産性において重要なポイントをいくつかの見落とす恐れがあります。
時間の節約を超えて:生成AIの真価を引き出す
Copilot for Microsoft 365などのツールの早期導入から学んだ経験により、アバナードは、時間の節約を超えたAIコパイロットの価値について、より多くの検討方法を確立しています。生産性に計り知れないインパクトを与える可能性を秘めるシナリオをいくつか見てみましょう。
- 「白紙症候群」の克服:重要なタスクの重みが大きく立ちはだかります。真っ白なスクリーンに見つめ返され、方向を見失ってしまったことを嘲笑されているかようです。やる気の火花にうまく点火するにはどうすればよいでしょうか。出発点を見つけてみますか、それとも正しい方向にほんの少し腕押しをしてみますか?
- コーディングに対する新しい視点:開発者は、まるで迷路のようなコーディングの課題に直面させられます。これには、迅速な解決策よりも斬新なアプローチが必要です。フォーラムや同僚がうまくいかないときに、革新的な解決策や代替案を見つけるにはどうすればよいでしょうか?
- 集中力を取り戻す:立て続けに会議を繰り返すと、精神的に疲れ果ててしまいます。それでも重要なデリバラブルにすぐに戻らならなければなりません。しかし、どこまで作業していましたっけ。メモを隅から隅まで見直すことなく、進捗状況の要点をすばやく把握して、次のステップを見極めるにはどうすればよいでしょうか?
- 最後の仕上げ:レポートを完成させるために何時間も費やしました。しかし、すでに夜は遅く、締め切りが近づくにつれて、新鮮な目と先入観のないレビューで内容のわかりやすさや正確さを確認してもらいたいと切望するようになります。同僚が帰宅して久しい静かなこの時間にどうすればよいでしょうか?
- 些細な日常業務を手放す: 来る日も来る日も単調なタスクが重くのしかかり、認知能力に悪影響を与えます。重要な戦略的決定を下さなければならないとき、その疲労は明らかです。日常業務に縛られることなく、明確さを維持するためにはどうすればよいでしょうか?
効率性を超えて: AI で従業員を強化
生産性や効率性を追求するような競争の中では、Microsoft Copilot のような生成 AI ツールで得られる奥深くて多面的なメリットは見過ごされてしまうかもしれません。これは、働き方の気風や人生の見方全体を根本的に再構築するもので、次のことを可能にします:
- 認知能力の向上:AI Copilotのようなツールを使用するということは、精神的な余裕を保つことにつながり、日々の中にただ詰め込むのではなく、知識をより深く活用できるようになります。ほんの少し心のエネルギーを高めるだけで、より想像力に富み、革新的で、好奇心をもって取り組むことができるようになります。あらかじめ決められたルートをより効率的に歩くよりも、新しい道を切り開く力となることが利点といえるでしょう。
- ウェル ビーイングの向上:認知能力の増幅は外側へと波及します。ツールの活用によりストレスが軽減されてバランスが促進するため、仕事の幅を超えてウェルビーイング全体に良い影響を与え、人生への満足感や健康を維持することができるようになります。流れゆく一瞬の時を丁寧に味わうことで、より有意義な交流、趣味への没頭、自分の振り返りやリラックスのための時間をつくることができるかもしれません。
- 優れた意思決定:ツールによって心が整頓されたことで、より良い意思決定を行えるようになります。状況をより総合的に判断して課題を予測し、積極的に戦略を立てることができるようになります。迅速な対応からインテリジェントな対応への転換です。
- 生涯学習の促進:この認知的解放には細小ですが大切なメリットがあります。その一つは、もともと持っていた好奇心への再点火です。新たなアイデアが受け入れやすくなることで、目新しいスキルの習得に熱心になり、個人的にも専門的にも、スキルアップに対して継続的に取り組むことができるようになります。
- 量より質:スピードは重要ですが、アウトプットの質は何よりも重要です。ツールによって仕事の集中力と深さを高められ、より多く生み出すだけでなく、より良いものを生み出すことができるようになります。
- コラボレーション:高度なツールは、チームのコラボレーションを強化し、より良いコミュニケーションと相乗的な成果を生み出します。ただ隣り合わせになるのではなく、一緒に創造するのです。
時間の節約は実質的で利点でもありますが、Microsoft Copilot のようなテクノロジーの進歩がもたらす真の影響はそれだけに留まりません。仕事や生活のあらゆる面に影響を与え、ただ速いだけではない、より豊かな思考や行動を後押ししてくれるのです。
生産性の落とし穴を回避し、AIの本当の重要性とは何かを見極める
AI時代の初期段階にあり、その影響をようやく視ることができるようになってきました。AIの人材、プロセス、プラットフォームへ投資を行う際には、求めるものは「生産性ではない」ということを忘れてはなりません。これは劇的に異なるビジネス成果についてのことなのです。
アバナードが Microsoft Copilot を導入した際も同じでした。初期のアバナード社内調査では、使用感の向上に伴い、使用率の増加、作業品質の向上、コミュニケーションの効率化、そしてもちろん時間の節約も実現したと報告されています。しかし、認知疲労も増加しています。新たなツールで新たなテクニックやタスクを学ぶのは容易ではないためです。グローバル調査でも、Microsoft Copilotなどの生成AIツールを使用するためには、従業員のオンボーディング/トレーニングへのサポートが必要であると98%が回答し、50%がそのトレーニングには相当のサポートが必要であると回答しているのも不思議ではありません。従業員にAIを使いこなしてもらうには、安心して学習できる機会を用意することが必要不可欠です。
AIの導入準備はできていますか?生成AIについての皆様のエクスペリエンスは、皆さまの価値観と方法で測っていただくことになります。しかし、すでにAI Copilotを使用したことがある者の経験の中には、導入と活用をより迅速に責任ある方法で行うためのヒントがあります。
Microsoft Copilot など、生成 AI ツールの更なる可能性について知るためには、AI導入を行う際の感覚のズレをより適切に把握する必要があります。AIファーストの考え方を理解するために必要なことについては、アバナード AI 導入準備レポートをご参照ください。
¹ Palad, J. B. (2022). Strategies for Improving Organizational Efficiency, Productivity, and Performance through Technology Adoption. Journal of Management and Administration Provision, 2(3), 88-94.