第4回:AIを生かしたスマートファクトリーとは
アバナードで製造業のコンサルタントをしております小林 敦志です。
本ブログでは、第4次産業革命の次におこるインダストリーX - デジタルとAI、そして人材を融合させて、モノづくりを変革する例をご紹介していきます。
今回はスマート ファクトリーについて、AIの力をどう生かせるかをご説明したいと思います。
水力・蒸気での動力の提供で機械製造設備を使った第1次産業革命、石油と電力で動力を自在な形に変換することで大量生産が始まった第2次産業革命、そして第3次産業革命ではコンピュータによる制御ができるようになりました。第4次産業革命であるIndustry4.0では、バーチャル空間が利用できるようになり、現実の世界をコンピュータの中に写し取ることができるようになりました。
動力の発生から変換へ、制御から再現へ、と進んできた製造の革命は、次はAIの力になることを言うまでもありません。では、どのような変化があるでしょうか?実際の用途を元に、構造を描いてみました。
AIを活かしたスマートファクトリー
製造の現場、工場の中では、構内物流や設備の自動化および品質を指示、監視する仕組みが存在します。
図中、左下のAutomateと記載した部分:製造した結果のデータを取得し、情報を見える形に変換する仕組みが、Industry 3.0の結果、構築されています。
図中、右下のConnectivity部分 :Industry4.0の成果から、右上の自社の製品の挙動や形状を把握するデジタルツインがあり、また工場のラインを3Dで再現したデジタルツインや、自動化や搬送をシミュレーションするデジタルツインがIndustry 4.0の進行しつつある成果として考えられます。
PDCAを考慮すると、左側で指示した内容が、現場で実行されて実績として結果を返すサイクルがある一方、バーチャル空間では、デジタルツインを生かして高速でPDCAを実現できるはずです。
この環境と求められる反応時間を考慮すると、製造の現場では、知覚や認知に相当するAIが使えます。弊社でもAI Visionという画像品質検査のソリューションをご提供しております。その上の層では、工場データの見える化基盤を利用し(Industry 3.0の成果です)、問題の予兆を見つけたり、全体の傾向を見つけたりする業務を支援する、いわゆるBot系のAIが利用できます。弊社ではManufacturing Copilotとして、現場の担当者を支援するソリューションを提供しております。
その上となる戦略層では、どのようなAIの使い方があるでしょうか?工場の例ではないのですが、弊社のお客様であるthyssenkrupp Materials Servicesの例 が参考になります。「データを自動的に分析し、運用上の仮説に基づいてシミュレーションを実行できる」プラットフォームで、AIが仮説に基づいてシミュレーションを実施するということです。
工場では、お客様の需要の急な変動や、コロナ禍で直面した部品の手配の問題、さらには関税制度の変更などの外部要因により、大きな影響を受けます。新製品のための新しい設備の導入やライン変更などにより、従来は問題がなかった工程に滞留が発生するなども充分考えられます。このような仮説に基づいて、どのような影響を受けるか、をAIがシミュレーションできるようになってきております。
AIが導く未来の自律運営の工場
1つ参考になるWebサイトとして、半導体の製造に関する業界団体であるSEMIが主催しているSmart Manufacturing イニシアチブがあり、その中に、Ai driven Autonomous factory of the future というサイトがあります。
ここでは、スマートファクトリーもしくは自律型工場の実現に向けた、5つの技術段階を示しています。
データを取得する段階
次にそこから知見を得る段階
デジタルツインを構築する
デジタルツインを生かして、予想や予防を実施
最後の段階で自律化する
私は、このような自律運営の工場への道は1本ではないと考えるので、前節のような構造で捉えていますが、このようなロードマップは大変参考になることと思います。
また、自律運営だけではなく、工場のエネルギーの観点からのサステナビリティや、人材育成の観点からも、イニシアチブでは論じているようです。AIがもたらす未来の工場では、この2点も重要です。
本稿では、AIを生かしたスマートファクトリーのアウトラインを記載しました。アバナードでは、2025年1月22日(水)から24日(金)まで東京ビッグサイト東・南ホールで実施される「スマート工場Expo」に出展し、「AIを生かした次世代のスマート工場」について、より深くご紹介する予定です。是非とも、このExpoにご足労いただければと思います。
スマート工場Expo来場登録はこちらからhttps://www.fiweek.jp/tokyo/ja-jp/about/sfe.html
このブログでも、引き続き、製造業でのAIの活用例、アイディアや、デジタル化について、引き続きご紹介する予定です。ご意見、ご要望がありましたら、ぜひ、当社までお寄せください。