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デジタルツインは、誤解されがちなコンセプトです。デジタルツインとは単に、モニタリングやレポーティングのために「モノのインターネット(IoT)」を使用して、物理的なモノをデジタルで表現したもの、でしょうか。ある意味、その答えは、Yesです。しかし、デジタルツインのコンセプトと活用方法には、さらに多くの意味があります。

Wikipediaは「デジタルツイン」を「物理的オブジェクト、またはプロセスのリアルタイムのデジタル複製として機能する仮想表現」と定義しています。このコンセプトは50年以上前から存在し、文書化された最初の例は、デジタルモデルを開発して、現実世界における実装の前にシナリオテストを可能にした、アポロ計画です。このコンセプトは、1970年4月、アポロ13号のミッションが大惨事の危機に面した時、文字どおり命を救いました。NASAは、月着陸船のデジタルモデルを使用して「初回でも正しくやり遂げる」機会において、物理的な実行の前に複数の調整を「テスト」することができました。このアプローチが、最終的に宇宙飛行士たちの安全な地球への帰還へと導いたのです。

今日、デジタルツインのコンセプトは、製造業やエンジニアリングで広く採用されています。例としては、大規模発電、ジェットエンジンのテスト、およびF1のレーシングカーなどがあります。このコンセプトは、その他の多くの産業に広がり、2021年から2027年の間に、500億ドルに至る、35%の成長を予測する分析もあります。この成長は、IoTの採用によって活気づけられ、IoTを採用している組織の75%が、デジタルツインの採用も計画しています。

これで終わりなのか、まだ続きがあるのか
デジタルツインは資産とその関係性をデジタル化して結びつけるもので、デジタル神経系システムとも形容できます。しかし、真の力が解き放たれるのは、このデジタル神経系システムが、学習を通じて、外的刺激に対して意思決定する時といえます。すなわち、デジタルメモリとデジタル脳とが結び付けられた時です。これは、私の同僚、Simon Turnerが開発し、私に最初に説明してくれたコンセプトです。企業のデジタルメモリを提供するデータプラットフォームと、データサイエンスによるデジタル脳が結びついたとき、デジタルツインの力が解き放たれると彼は言いました。これらの要素が揃って初めて、企業がデジタルツインの力を十分に活用することができるのです。

では、このことは、金融サービス業界にとって、どのような意味を持つのでしょうか。以下に4つの例を挙げます。

  1. デジタルツイン組織(DTO):
    DTOは、銀行が変革プロジェクトによる成果についてモデリングして評価できるようにします。これによって、デジタル神経系システムが形成され、企業のデジタルメモリを使用して、新しい体験に基づいて学習が開発されます。例えば、顧客を取り込むプロセスは、顧客との今のやりとりと過去の実績をモデリングして改善することができます。新製品の発売にもこのようなアプローチを採用することができます。
  2. 支店管理とチャネル管理:
    デジタルツインは、顧客や社内でのチャネルミックスの変化による影響をモデリングし、最適化するために活用することができます。支店やチャネルのモデルと、プロセス、スキル、および体験に関するデータを使用することで、実際に施行する前に、新しいエンゲージメントのための最適なチャネルミックスを設計することができます。
  3. リスク管理:
    リスクをモデリングする機能は、融資、特に、過去18ヵ月間に企業や消費者に向けた融資パフォーマンスに適用することができます。返済を予測するフレームワークを作成することで、銀行が積極的に資金を管理し、バランスシートを強化する助けとなります。同様に、銀行のネットワークとセキュリティ能力をモデリングすることで、新たな脅威を迅速かつ効率的に評価することが可能になります。
  4. ESG:
    気候変動リスクのエクスポージャーをモデリング、モニタリング、およびレポートする能力は、昨今ますます重要になってきています。特に、モデリングアプローチは様々であるため、気候変動評価機関、金融機関以外の企業二酸化炭素排出データは監査されていません。ストレステストとシナリオプランニングが鍵となるため、デジタルツインを適用することで、気候変動の影響を、より適切に理解することが可能になるでしょう。

これらは一例に過ぎません。これからもっと多くの例が出てくることでしょう。新しい活用方法の開発によって、イノベーションを促進し、コストを削減し、リスクを最小化する機会がもたらされるでしょう。今こそ、精査し、実行に移す時です。マイクロソフトは、クラウドネイティブのデータとデータサイエンスプラットフォームの提供によって、デジタルツインを作成する機能を身近なものにし、企業のデジタル神経系システム、メモリ、およびデジタル脳の形成をかつてないほど容易にしました。

このトピックにご興味をお持ちでしたらご連絡ください。金融サービス業界においてデジタルツインを展開するため、どのようなお手伝いができるかお話させてください。

原文:Digital twins for banks: Developing your digital nervous system

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