第一三共グループの自社生成AIシステム「DS-GAI」の開発・導入を支援

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背景

第一三共株式会社は、2025年度をターゲットにした第5期中期経営計画で4つの成長ドライバーを定め、その成長を支える重要基盤のひとつに「先進デジタル技術」を位置づけています。そして、その推進役がDX企画部 全社変革推進グループ 先進デジタル技術チームです。

同社の主査 朝生 祐介 氏はこれまでも、先進デジタル技術を基軸とした数々の全社変革プロジェクトをリードしてきました。朝生氏は「『世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献する』パーパスの実現に向け、全社レベルで DXに取り組み、データとデジタル技術を駆使したグローバルファーマ イノベーターへの変革を全社一丸となって進めている」と説明しました。

「サステナブルな社会の発展に貢献する先進的グローバル ヘルスケアカンパニー」を2030年ビジョンとして掲げる同社にとって、データとデジタル技術の活用は大きなテーマです。特にインパクトが大きかったのが、 2022年 11月にOpenAIがリリースしたChatGPTでした。

「社内で、生成AIのビジネス活用に関する機運が一気に高まったが、その一方で、生成AIをビジネスで活用するためには、機密情報や個人情報の漏えいをどのように回避するかなどの課題があった」と朝生氏は話します。また、生成AI固有の論点として、著作権侵害リスクやハルシネーション(AIが間違った結果を生成すること)によるミスリード、生成AI自体に対する誤解や依存など、事前に考慮しなければならないテーマが数多くありました。

そこで、まずはChatGPTを含むオンラインサービスの利用指針を策定し、全社周知を図りました。そして、上述した生成AIの課題を抜本的に解決し、生成AIの積極的な業務活用を推進するためには「当社独自の生成AIシステムを開発することが不可欠であるとの結論に至った」ということです。

ソリューション

そこで、2023年5月頃より生成AIの開発パートナー選定 が開始されました。朝生氏は「取引先選定に向けたリスト作成を行い、机上調査等で数社に候補を絞って、打ち合わせを行った中の1社がアバナードだった」と振り返りま す。アバナードとの初回の打ち合わせは2023年6月頃で「生成AI活用という喫緊の課題を伝え、短期間で着実に本番稼働させられるかという点を中心に対話を行った」ということです。

パートナーとしてアバナードを指名した決め手となったポイントについて朝生氏は「全社リリースに向けて当社が求めるタイムラインを実現できる提案内容だった」点を挙げます。

また「タイトな開発期間に加え、当社はMicrosoft AzureをIaaSとして活用した経験、ナレッジも十分にない状態だった」と朝生氏は述べます。そこで、OpenAIの生成AI技術を安全にビジネス活用するためには「Azure OpenAI Serviceを活用して当社のAzureテナント内の閉域網で処理を完結させることが最善と考え、Azureに関する経験とスキルに長けているアバナードなら安心してお任せできると考えた」ということです。

開発プロジェクトは大きく2つのフェーズに分けられます。2023年9月のリリースに向けた「フェーズ 1」、そして、リリース後の機能拡張を行う「フェーズ 2」です。

「フェーズ 1」は2023年8月にプロジェクトが開始し、わずか1カ月で「国内グループ会社の全従業員約9,300名を対象に、自社生成AIシステムDS-GAI(ディーエス・ガイ)の本番リリースをすることができた」と朝生氏は述べます。本番リリース後には、アジャイルを意識した「MVP(Minimum Viable Product)」として、より利便性を高めるためのユーザーインターフェース改修と機能追加などを継続的に実施しました。

そして、2023年10月からは「フェーズ 2」としてGPT-4対応や画像生成機能、ファイル解析機能、社内データセット解析機能、Code Interpreter機能、管理機能の強化に関わる機能拡張を順次行いました。

開発と並行してDS-GAIの社内定着を目的として、ユーザーへの教育や啓発活動にも取り組みました。同社主査 金田 順花 氏は「社内外の有識者を招いた社内講演会の開催やアイデア創出ワークショップなどを継続的に開催した」と話します。また、DS-GAIの使い方については「社内向けに短い動画を配信して周知することや、社内ユースケースやプロンプトテクニックなど、 DS-GAIに関連した情報を集約する特設サイトを社内に開設、運営している」ということです。

成果

DS-GAIの利用状況について朝生氏は「全社リリース後、わずか2カ月で1日あたりの平均利用者数が約500名に達し、非常に速いペースで生成AIの社内定着が進んでいる」と述べました。

ユースケースについては「アイデア出し、コーディング支援、文章作成、学習、分析など、非常に幅広い領域で活用されている状況」ということで、2024年2月の社内講演会では、DS-GAIの利用者7名が登壇し、各組織における活用事例が発表されました。金田氏は「自身の業務に即して DS-GAIを取り入れており、中には、プログラミング知識 の無い社員が自身でアプリをカスタマイズしたり、ちょっとしたイラストを作るというような、これまで外注していたものを自身で作ってみるなど、新しいスキルを得るという当初の想定を超えた素晴らしいユースケースがあった」と振り返ります。また、効果を挙げている他部署のユースケースを見て「自分の部署でもDS-GAIの 教育をして欲しいといった問い合わせも寄せられている」ということです。「作業効率の向上やアウトプットの品質向上といった直接的な効果だけでなく、全社の風土、文化醸成にまで貢献出来たのは、当初の期待を超える成果だった」と述べました。

導入前後のアバナードの支援について、朝生氏は「今回が初めての取引ではあったが、プロジェクトを通してアバナードの提案力、技術力の高さを実感した」と述べます。提案力については「当社から難易度の高い技術実装を依頼しても、技術的にどうすれば実現できるかを常に前向きに考え、期待に応えてくれた」ということです。そして「高い目標達成に向けて、共にチャレンジし、厳しい状況であっても寄り添い、最後まで伴走する姿勢に助けられた」と述べます。

また、技術力については「短期間で、当社の生成AI活用に不可欠な主要機能の実装を完遂し、リリース後も大きな不具合無く、安定稼働している」点を挙げました。

今後、同社では、生成AIを以下の3つのレイヤーで捉え、開発を進めていきます。

1. 基盤モデル実装

2. 基盤モデルの言語理解エンジンとしての社内データ活用(ファイル解析機能、社内データセット解析機能などの強化)

3. 個別業務への最適化(ファインチューニング、業務特化型ユーザーインターフェース(UI)、社内業務システム連携など)

朝生氏は、(1)について「Azure AI Studioを活用して様々な大規模言語モデルを利用可能にしていく」とし、(2)については「社内データセット解析機能をより使いやすく強化したい」と展望を述べました。そして、(3)の開発にも取り組み、全社的なDX加速化に向けた原動力としていく考えです。

最後に朝生氏は「アクセンチュア・マイクロソフトの合弁会社という利点を生かし、これからもアバナードには生成AIに関わる最先端の技術活用について提案、支援をお願いしたい」と締めくくりました。

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